
会場は狭かったですが、展示内容の濃さにクラクラしました。 予備知識が無く「安宅コレクション」がどれほどのものか知らなかったからです。 これは凄い…!
数世紀前に作られた工芸品が未だ色あせぬどころか、むしろ現代の美術品より燦然と輝いています。 中国・韓国の陶芸文化の奥行きを垣間見たような気がしました。 造形・質感・色の深み…見ることを知らぬ僕でも違いがわかります(写真の図録も買い求めましたが、あの色は出てませんでした)。
また英一氏が作品を見初め手に入れたエピソードが記されていてます。 作品に真剣に向き合う形の鑑賞に疲れたとき、このエピソードが読み物としても面白かった。 お書きになったのは大阪市立東洋陶磁美術館の伊藤郁太郎館長です。
館長の弁をお借りすれば「言葉に騙されるということが、今日の文化を見ていると案外多い。見せかけの文化、飾りの文化、偽りの文化であって、ものの本質とはちょっとずれてるところがあるんじゃないかと。」 「今は正統派の美術品よりも若干異端的、ジャーナリスティックに取り上げられ易いものに眼が向けられがちです。しかし、必ずしも本物はそうじゃないよと。(中略) もっと静かなもの、声高にはしゃべらないもの、正統的なものにこそ、本物があり、ものの姿が潜んでいるような気がするのです。」
・・・まさにその通りです。
ポップカルチャーやサブカルチャーが主導権を握ってしまった感のある現在の日本文化にドーンと鉄杭を打ち込むかのような重厚なコレクション展でした。

ラベル:安宅コレクション